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ニュースレター:条件付き定期賞与を通常賃金として認定できるのか
2025.01.07
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1. 概要

最近、大法院は2013.12.18.宣告2012ダ89399全員合議体判決により、通常賃金に関する法理を確立し、支給日を基準に在職中の労働者にのみ支給する条件(「在職条件」)が付加された定期賞与と、基準期間内に15日未満勤務した場合、支給対象から除外する条件(「勤務日数条件」)が付加された定期賞与の場合、在職条件または勤務日数条件のような追加的な条件を満たさなければ支給される賃金であるため、「固定性」が欠如し通常賃金に該当せず、特に、在職条件付きの定期賞与の場合、条件の付加により「所定労働対価性」を満たしていないという趣旨で判決を下しました。さらに、大法院は、2017年に在職条件付き定期賞与の通常賃金性を再び否定することで、上記2013年の全員合議体判決の法理を確固たるものとしました[大法院2017.9.26.判決2016ダ238120判決など]。

一方、大法院は、2024年12月19日、H生命保険・H自動車の通常賃金事件において、全員一致意見の全員合議体判決を宣告し、[1] 「固定性」を通常賃金の概念的な指標から除外し、[2] 通常賃金の概念と判断基準を再確立しました[大法院2024.12.19.宣告2020ダ247190全員合議体判決(上告棄却)及び大法院2024.12.19.宣告2023ダ302838全員合議体判決(破棄・差し戻し)、以下、「本件全員合議体判決」]。以下では、本件全員合議体判決の具体的な内容を検討し、本件全員合議体判決の意義及び今後の展望について紹介します。

2. 本件全員合議体判決の要点 

A. 以前の判例が提示した固定性を通常賃金の概念的指標から除外

大法院は、以前の判例が提示した「固定性」を以下のように5つの事由を挙げて、通常賃金の概念的指標から除外しました。

第一に、大法院は、①通常賃金に関する定義規定である勤労基準法の施行令第6条第1項をはじめとする法令のどこにも「固定性」の根拠がなく、法的な根拠なしに「賃金の支給の有無や支給額の事前確定」を意味する固定性を通常賃金の概念的指標として要求することは、通常賃金の範囲を過度に縮小させるものであると判断しました(法令不合性)

また、大法院は、②「固定性」により、当事者が在職条件などの支給条件を付加して簡単にその賃金を通常賃金から除外することを認めることで、通常賃金の強制性が奪われ(強制性)、③通常賃金は「所定労働の価値」を評価した概念であるため、実際の労働と無関係に所定労働自体の価値を完全に反映しなければならないにもかかわらず、そうできないだけでなく(所定労働価値反映性)、④通常賃金は法定手当算定のためのツールであるため、時間外労働などを提供する前に算定することができなければならないが、事前に確定できない将来の要因を排除し、「所定勤労の完全な提供」という前提的概念に従うことで、「事前的算定可能性」を確保することができるので、「固定性」を除外したとしても、通常賃金の事前的算定可能性が低下することはないと判断しました(事前的算定可能性)

最後に、大法院は、⑤通常賃金が時間外・深夜・休日労働を抑制しようとする労働基準法の政策目標に合致しなければならないが、固定性が通常賃金の範囲を不当に縮小して、時間外労働などを抑制し相応の補償をしようとする労働基準法の目標に合致しないと判断ました(政策不合性)

B. 「固定性」を除外し、通常賃金の概念と判断基準を再確立

上記のように、本件全員合議体判決は、以前の判例が提示した「定期性、一律性、固定性」という通常賃金の要件のうち、「固定性」の要件を破棄しました。したがって、上記の全員合議体判決によると、通常賃金は「所定勤労の対価として定期的、一律的に支給することにした賃金」を意味します。すなわち、労働者が所定勤労を完全に提供すれば、その対価として定期的、一律的に支給するように定められた賃金は、それに付加された条件の有無や 到達可能性とは関係なく、通常賃金に該当します。

この基準によると、以下のように「在職条件付き賃金」「勤務日数条件付き賃金」の場合、通常賃金性が認められる可能性があるものの、勤務実績によって支給される「成果給」の場合には、基本的に通常賃金性が認められないと予想されます。

「固定性」が除外された以上、「在職条件付き賃金」の場合、労働者が在職することは所定労働を提供するための当然の前提であるため、在職条件が付加されるだけでその賃金の所定労働の対価性や通常賃金性が否定されることはなく、「勤務日数条件付き賃金」の場合も同様に、所定労働を完全に提供する労働者であれば満たすべき所定労働日数以内の勤務日数条件が付加されるだけでその賃金の通常賃金性が否定されることもなくなります。ただし、所定労働日数を超える勤務日数条件付き賃金は、所定労働を超える労働の対価であるため、通常賃金には該当しません。

一方、労働者の勤務実績に応じて支給される「成果給」の場合、一定の業務成果や評価結果を満たさなければ支給されないため、固定性を通常賃金の概念的指標から除外しても、一般的に「所定労働対価性」を備えていると見ることが難しく、通常賃金に該当には該当しません。ただし、勤務実績と無関係に支給される最低支給分は、所定労働の対価に該当します。

C. 通常賃金に関する新たな法理の効力範囲

大法院は、本件全員合議体判決を通じて、2013年全員合議体判決のうち、固定性を通常賃金の概念的な指標としたこと、在職条件及び勤務日数条件付き賃金、成果給の通常賃金性を固定性認定の可否によって判断したこと、在職条件付き賃金が条件の付加により所定労働対価性を備えていないと判断したこと及びそのような以前の判決を本件全員合議体判決と矛盾する範囲で変更しました。

さらに大法院は、本件全員合議体判決が賃金体系の根幹となる通常賃金の概念を再確立するものであり、賃金に関する多数の集団的法律関係に重大な影響を及ぼすことを理由に、法的安定性と信頼保護のために、本件全員合議体判決による新しい法理は、「本判決宣告日以降の通常賃金の算定から適用」すべきであると判断しました。

ただし、本件及び併合事件(本件全員合議体判決の宣告時点で当該判決が変更する法理が裁判の前提となり、通常賃金に該当するかどうかが争われ裁判所に継続中の事件)には、具体的な事件の権利救済を目的とする司法の本質上、新しい法理が遡及的に適用されると見なされます。

3. 本件全員合意体判決の意義及び今後の展望

本件全員合意体判決は、賃金体系の根幹となる通常賃金の概念を再確立するものであるだけでなく、以前の2013年全員合意体判決を基に形成された賃金体系と労使合意などに大きな混乱をもたらすことが予想されます。これにより、今後、企業の負担が大きく増大すると思われ、賃金体系の大々的な改編が避けられないと予想されます。

ただし、新たな法理が本件全員合意判決の宣告日以降の通常賃金の算定から適用されるものであるため(本件及び並行事件の場合、遡及適用)、本件及び並行事件ではない限り、過去に発生した通常賃金の問題による訴訟がどのような形で行われるかは予想が難しい状況です。

なお、並行事件ではない本件全員合議体判決以前の通常賃金の問題については、以前の2013年全員合議体判決の「固定性」の法理を適用して日割計算を基準に通常賃金の計算をしなければならないという趣旨であるため、並行事件ではない判決日以前に発生した通常賃金の問題について、既存の下級審判決で在職者条件の有効・無効について判断した部分について、再度、通常賃金訴訟を提起して主張することができるかどうかが追加的な争点になると思われます。

このような点を考慮すると、企業は法律専門家の協力を得て、先制的に本件全員合意体判決がそれぞれの事業場の賃金体系に与える影響を分析し、これを基に現行の賃金体系を点検し、効率的に改編すべきであり、新たに発生する通常賃金紛争に積極的に対応することが最も重要です。

 
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法務法人 麟(LIN)は、通常賃金及び賃金体系の設定及び改編などに関し、多年間蓄積された豊富な諮問及び訴訟事例を保有しています。
上記内容に関して気になる点がありましたら、法務法人 麟(LIN)の人事チーム(Tel. 02-3477-8695)までご連絡ください。
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