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高級バッグ「リフォーム」の商標権侵害の有無(ソウル中央地方法院2023年10月12日判決2022カ合513476商標権侵害禁止等判決に対する評釈)
2023.12.07
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数年前からブランド品の修理や復元のレベルを超えて、元の製品の生地などの構成材料を利用して全く新しいデザインまたは新しい製品に生まれ変わらせる「リフォーム」が脚光を浴びるようになり、最近ではこのような「リフォーム」をしてくれるブランド品修理業者が簡単に目につくようになりました。
 
ところで、最近、ブランド品リフォームと関連して意味のある判決がありました。ブランド品バッグを専門的にリフォームする修理業者に対して商標権侵害が認められたのですが、この判決は今後のリフォーム業界に大きな影響を与えると予想されます。

1. 事件の経緯

高級ブランド品修理業者Kは、バッグの所有者から依頼を受けてエルメス、シャネル、プラダ、ルイヴィトン、グッチなどの高級ブランド品バッグをリフォームして別のデザインのバッグや財布に生まれ変わらせ、2017年頃からこのようなリフォーム結果物を自身のホームページやブログなどに掲載して広報してきました。
 
これに対し、ルイヴィトンは、Kがルイヴィトンの商標が表示されたバッグの生地を利用して新しいバッグと財布を製作する行為が実質的にルイヴィトンの商標を付けたバッグ、財布を生産したものであるため、ルイヴィトンの商標権を侵害したと主張し、Kにリフォーム行為の禁止と3,000万ウォンの損害賠償を請求しました。

2. 商標権の「消尽」と商標の「使用」の法理

商標権の消尽とは、商標権者又は商標権者の同意を受けた者(使用権者)から適法に購入した商品については、その個別商品の商標権は、権利者の対価取得によって消尽し、その後の当該商品の処分及び利用行為には商標権の効力が及ばないということです。韓国では、このような権利の消尽を著作財産権のうち、配布権(著作権法第20条ただし書き)、半導体集積回路の配置設計権(半導体集積回路の配置設計に関する法律第9条第2項)以外には法律で明示していませんが、実務的には、特許権、商標権などほとんどの知的財産権について権利の消尽を認めています。

しかし、当該商品の商標権が購入などで消尽したとしても、その商品に表示されている商標について商標権者が全く権利を行使できなくなるわけではありません。法院は、すでに使用が終わってフィルムが取り除かれた使い捨てカメラを購入した後、カメラに新しいフィルムを交換充填し、新たに包装をして再び使い捨てカメラとして再販売した業者の商標権侵害事案において、商標権の消尽が認められても、「元の商品との同一性を害する程度の加工や修理をする場合」には、実質的に生産行為をするのと同じなので、このような場合には、再び商標権者が当該商品に商標権を行使することができるとし、上記のような使い捨てカメラのリサイクル及び販売行為が使い捨てカメラの本体に刻印された既存商標の商標権者の商標権を侵害したと判断しました(大法院2003. 4.11.宣告 2002ド3445判決)。すなわち、商標が表示された商品が販売されることによって商標権が消尽したとしても、そのような商品に対する加工又は修理によって実質的に新しい商品が製作されたと見ることができる程度に既存の商品が変形された場合、加工又は修理によって変形された商品に対しては、商標権者が再び商標権を行使することができるという意味です。

一方、商標法上、「商標の使用」とは、商品又は商品の包装に商標を表示する行為、商品又は商品の包装に商標を表示したものを譲渡又は引渡したり、電気通信回線を通じて提供する行為又はこれを目的として展示したり、輸出・輸入する行為などを意味します(商標法第2条第1項第11号)。
 
ただし、商標を利用したとしても、景品、見本などそれ自体で交換価値を持ち独立した商取引の目的物となる「商品」に該当すると見ることができない物品に商標が使用された場合(大法院1999.6.25宣告 98フ58判決、大法院2013.12.26宣告2012フ1415判決など)。または純粋にデザイン的にのみ使用されたり、製品の機能を案内・説明するためのものであって、商標の本質的な機能である出所表示のためのものではない場合(大法院2003.10.10宣告2002ダ63640判決、大法院2004.10.15宣告2004ド5034判決など)には、商標法による「商標の使用」が認められず、商標権侵害が成立しません。

3. 法院の判決の要旨

ルイヴィトンの商標権侵害の主張に対し、Kは、ルイヴィトンの商標権は、バッグの所有者が当該バッグを適法に購入した時点で消滅し、たとえ、バッグをリフォームした行為が実質的に新しい製品を生産するものであったとしても、Kは、バッグの所有者が望む形、用途に合わせてリフォームして所有者に返却しただけで、第3者に販売する目的があったわけではないから、ルイヴィトンの商標権を侵害したと見ることはできないと反論しました。また、被告が作業をしたリフォーム製品は、バッグの所有者から個別に収集され、リフォームされた後、所有者に返却されるものであるため、商標法上の「商品」とはいえず、リフォームを要請したバッグの所有者は、リフォーム製品の出所を混同するおそれがなく、Kがバッグの生地に表示されたルイ・ヴィトンの商標を出所表示のために使用したものではないため、商標法上の「商標の使用」に該当しないという主張もしました。
 
しかし、法院は、①Kの商標権消尽の主張に対しては、Kのリフォーム行為は、単純な加工や修理の範囲を超えて商品の同一性を害するほど本来の品質や形状に変更を加えたものであるため、先のバッグの購入による商標権消尽の有無又はリフォームが第3者販売を目的として行われたかどうかにかかわらず、商標権者が商標権を行使することができると判断し、②商標的使用ではないという主張に対しては、ブランド品をリフォームした製品は通常、中古で取引されているため、交換価値をもって市場に流通する可能性が十分にあり、バッグの所有者は、リフォームされた製品の出所を誤認しないが、バッグの所有者からリフォーム製品を譲渡したり、バッグの所有者が持っているリフォーム製品を見た第3者がその出所を混同する恐れがあるなど、一般消費者の観点からはその出所を混同する恐れが明らかであるという理由で、Kのリフォーム行為が商標法上の「商標の使用」に該当すると判断し、最終的にKの商標権侵害を認め、Kに商標権侵害禁止及び1,500万ウォンの損害を賠償するよう判決を下しました。

4. 判決に対する意見

ブランド品のリフォームが商標権侵害に該当するか否かについて、以前から多くの法律専門家が意見を述べてきたため、今回の法院の判決についても様々な意見が提起されています。

1) 判決内容を擁護する意見

判決内容を擁護する側では、商標は商品に対する消費者の信頼が体現されて価値が生じるものであり、商標法が登録商標権に対して商標使用の独占的権利を付与する理由は、第三者の侵害行為によって登録商標が持つ出所表示及び品質保証機能が阻害されることを防止するためであることを考慮すると、リフォームによって実質的に商標権者の商品ではない新しい商品が製作され、これらの商品に商標権者の商標が使用され、商標の出所表示及び品質保証機能が阻害されることを商標法が保護しなければならないという見解を示しています。
 
リフォーム製品を不特定多数に販売せず、リフォームを依頼した所有者に返却し、リフォーム業者の行為によって取引に参加した当事者(バッグ所有者)が認識する商標の出所表示及び品質保証機能が阻害される余地がない場合であっても、リフォームを依頼した所有者からリフォーム製品を譲り受けたり、所有者が所持しているリフォーム製品を見た第三者が、リフォーム製品に表示されたルイヴィトンの商標のために、その製品がルイヴィトンで生産・販売される製品であると誤認する可能性があり、このような可能性があるにもかかわらず、一般消費者に混乱を与えないために、リフォーム業者の商標を目立つように表示したり、リフォーム(または「リファービッシュ」)をしたという事実が確実に分かるような表記をしないということは、結局、リフォーム業者に既存の著名商標の名声に便乗する意図が一部でもあることを意味するので、リフォーム行為を商標法上の「商標の使用」として認め、商標法違反として規律すべきであるという意見です。

2) 判決内容を批判する意見

これとは異なり、判決内容を批判する側では、一般的にリフォームまたは商標権の消尽において商標権侵害が問題となるのは、「リフォーム後再販」、すなわち不特定多数に販売するためにリフォーム製品を生産する場合であって、このような「リフォーム後再販」行為が商標権侵害に該当するとしても、本事案のように、単にリフォーム業者が所有者の依頼を受けてリフォーム作業のみを行い、これを所有者に戻す場合は、「リフォーム後再販」行為とは異なって評価されるべきであるのに、法院が「リフォーム後再販」と単純な「リフォーム」を区別せずに商標権侵害の判断をしていると批判しています。
 
また、法院が言及する「出所混同の懸念」は、一般的に「混同の可能性」を判断する基準時である侵害主体の行為時点(リフォーム業者のリフォーム及びリフォーム製品の返品時点)に発生するのではなく、侵害主体の行為後、別個の主体による「商標の使用」行為時点に発生するため、リフォーム業者がリフォーム及びリフォーム製品の返品時点で、このような出所混同の懸念が現実化したり、明確に予見できたものでない限り、出所混同の懸念に対する責任をリフォーム業者に負担させることは不当であるという立場です。なぜなら、バッグの所有者がリフォーム製品を中古市場で再販売して出所表示及び品質保証機能が阻害されたとしても、バッグの所有者は「業として」バッグを販売したわけではないので[1]、「商標の使用」が認められず、商標権侵害が成立することができず、このように違法でない行為に加担・幇助したことを違法とすることはできないからであるという意見です。

5. 海外の立法例及び類似事例

ドイツ商標法と欧州連合(EU)の商標規定(trademark regulation)、商標指令(trademark directive)は、商標権の消尽を明文化し、市場で適法に取引された商品に対する更なる商業化(commercialisation)に反対する正当な理由が認められる場合(特に、当該商品が市場で取引された後、変更または損傷された場合)には、商標権の消尽規定が適用されないと定めています。上記の規定で「商業化」の意味が明確ではありませんが、「商業化」の一般的な意味を考慮した場合、市場に再び販売、流通する目的で加工又は修理する行為に対してだけは商標権消尽が適用されないと解釈される余地はあります。
 
ドイツとEUでは、このような法律条項を根拠に、取引業者が標識が付されたズボン、ジャケット製品を輸入した後、長ズボンを短く切ってショートパンツにした商品を製造したり、ジャケットから袖を取り除いてベストを作って販売した一般的な「リフォーム」製品の製作・販売行為に対して商標権消尽規定が適用されないと判断したことはもちろん(染色ジーンズ事件、BGH GRUR Int. 1996, 726)、許可された流通チャンネルでのみ販売することを約定し、高級ブランド品を供給された販売業者が、このような選択的供給(selective distribution)約定に違反して割引店舗等にブランド品を販売した行為に対しても、商標の名声を損なうことが権利消尽の例外条項で明示した「商品の損傷」に該当すると認め、商標権侵害が成立すると判断しました(Copad SA v. Christian Dior SA, Case C-59/08)。
 
米国は、欧州のように明文化された規定はありませんが、商標権の消尽をやはり認めており、連邦巡回控訴法院は、有名ゴルフボールブランドである「TITLEIST」ゴルフボールを収集し、損傷したゴルフボール表面の塗料、マーキングなどを除去した後、ボール表面に新たに塗料、クリアコートなどを塗布して損傷した部分を復元し、再び「TITLEIST」商標を取り付けた「リファービッシュ」(refurbish)製品を再販売した事案について、リファービッシュ」製品と新品の違いが大きくなく、再販業者が「中古」、「リファーブ」など需要者が「リファービッシュ」製品を中古または「リファービッシュ」製品であることを識別できるように包装して再販することは、需要者に混同をもたらす可能性がないため、商標権侵害が認められないという判決を下したところがあります[Nitro Leisure Prods. v. Acushnet, 02-1572 (Fed. Cir. Aug. 26, 2003)].

6. 示唆点

Kは法院の判決に不服し、現在当該事件は特許法院で継続中であるため、Kのリフォーム行為が商標権侵害に該当するか否かはまだ確定していません。ただし、もし今回の法院の判決が確定すれば、現在活発に行われている高級品製品のリフォーム関連事業に対して、高級ブランド会社による商標権侵害訴訟が相次ぐことが予想されます。
 
しかし、今回の法院の判決が確定されたとしても、ブランド品所有者個人が自らリフォームをすることは、商品取引又はサービス業を営むと見ることができないため、商標権侵害が認められないと思われます。(特許庁も2023.8.8、プレスリリースを通じて、「個人がリフォーム製品を作って使用することは問題ではないが、これを販売したり、流通・譲渡することは商標権侵害又は不正競争行為に該当する可能性がある」という立場を明らかにしたところがあります)。
 
一方、前述した商標権の消尽に関する判例の法理によれば、外形上大きな変化がなくても、製品の機能面で重要で本質的な構成品(又は部品)が寿命が尽きたり、破損するなどの理由でもはや使用できない場合、これらの製品の構成品を新しいものに交換したり、当該構成品部分を他の構成に置き換える場合には、実質的に生産行為をしたものと評価し、既存製品の商標権の効力を再び認めています。したがって、今回の法院の判決がそのまま確定される場合、ブランド品のリフォームだけでなく、製品保有者の依頼を受けて行う自動車のチューニング、電子製品の修理、アップグレード等の営業行為についても、第三者に対する販売目的があるか否かにかかわらず、既存製品商標の商標権侵害が認められる可能性があるため、「同一性を害する程度の加工や修理として生産行為に該当するか否か」に対する判断基準をより具体的に提示し、商標権者、製品を購入した消費者、製品の修理・加工サービスを提供する業者の権利範囲に対する予測可能性を保障する必要があるでしょう。
 
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上記内容に関してご不明な点がございましたら、いつでも法務法人 麟(LIN)IPチームのチョン・ウンジュン弁護士(Tel. 02-3477-8695)までご連絡ください。

[1] 2016年商標法全部改正当時、既存の商標法の「商標」の定義規定(「商品を生産・加工又は販売することを業として営む者が、自己の業務に関連する商品を他人の商品と識別されるようにするために使用する標章」)から「業として営む」部分を削除して「自己の商品と他人の商品を識別するために使用する標章」と定義したが、特許庁の「商標法全部改正法律案説明資料(2016.2.)」によると、「商品」における「商」は「商業」の略語ですが、「商品を生産・加工又は販売することを業として営む者」と表現することは「商」の概念と不必要に重なるため、削除したものであることを明らかにしており、個人的な範囲で使用することは解釈上「商」のカテゴリーに含まれないことを明確にしています。
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