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中国における特許実施権出資の際の留意点
2023.07.24
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特許技術を保有している企業が中国に進出する際、より容易に中国市場に参入するために、現地で強固なネットワーク及び高い資金力を保有している中国企業とJoint Ventureなどの形で合弁をする場合がよくありますが、この場合、国内の企業(特にスタートアップ)は、現金出資より特許技術で現物出資する方式をより好む傾向があります。

特許技術で現物出資する際、まず最初に確定すべき課題は、特許権で出資するか特許実施権で出資するかですが、当社の経験上、一部の企業は、合弁事業を推進する過程で多くの費用を投入した後に初めて、両者の違いを認識し、果ては合弁事業を放棄したり、原点から再検討する場合が多いため、以下にて、特許実施権で中国に出資する場合の留意点について簡単に説明したいと思います。

1.特許実施権の出資に関する法的根拠

中国「会社法」第27条第1項は、株主は、法令の定めるところにより、資本金として出資することができない資産を除き、実物、知的財産権、土地使用権などを金銭で価値を評価することができ、法律により譲渡可能なその他の非現金性資産により出資することができると規定しており、「市場主体登記管理条例」第13条第2項は、出資に活用することができない資産について列挙しており、役務、信用、個人の名前、goodwill、フランチャイズ事業権または担保権が設定された資産などがこれに含まれます。

上記二つの条項によれば、特許実施権は、1)その価値を評価することができ、2)法的に譲渡可能であり、3)出資に活用できない資産にも該当しないため、特許実施権による出資が中国で法的に可能であるという結論を出すことができ、この結論は中国でも通説として認められています。

また、ほとんどの中国裁判所でも、特許実施権による出資は法律に合致するので認めるという趣旨の判決を下しています。

2.裁判所の判例

以下の二つの事例は、中国の主要都市のうち、上海市と江蘇省南京市の中級裁判所が特許実施権による出資を認めた事例です。

上海市第2中級人民法院の2018年判決:契約上、技術使用権による出資が約束されており、価値評価も所有権ではなく使用権に対して行われ、被投資会社が実際に業務活動に技術等を活用していたため、特許実施権ないし技術使用権による出資義務が履行されたと認定。

江蘇省南京市中級人民法院の2013年判決:契約上、特許権による出資か特許実施権による出資かどうかについて明確に約定していないが、被投資会社が特許権移転手続きを経ずに既に特許技術を業務活動に活用しており、特許実施権に対する出資が法的に禁止されているわけでもないので、特許実施権による出資と認めるべきである。

上記のような裁判所の判決は、いずれも投資家の間で特許権出資者か特許実施権出資者かについて紛争が生じて提起した民事訴訟で、裁判所が特許実施権による出資が有効であると判断したものです。このようにここまで考慮して裁判所でも認めているので、特許実施権による出資が無条件に可能であると判断して投資計画を推進する企業もあるかもしれませんが、ここでもう一つ確認しなければならないのが現地の登記主管部署の実務についてです。

3.各地域登記主管部門の態度

中国の場合、現金出資であれ現物出資であれ、出資方式と出資金額について現地の登記主管部門で登記をしなければなりませんが、当所の経験上、各地域の登記主管部門は、特許実施権の出資登記について異なる立場をとっており、これにより実務的に困難に直面することがあります。

例えば、北京等の地域の登記主管部門は、特許実施権による出資について登記をすることができないという意見であり、上海等の地域の登記主管部門は、具体的な状況に応じてケースバイケースで判断すべきであるという曖昧な意見を示しており、湖南省等の地域の登記主管部門は、実際に特許実施権による出資登記を行った経験がないため、推奨しないという立場を見せています。

つまり、中国で特許実施権で出願する際に克服しなければならない最も大きな難関が、登記主管部門の「壁」です。それだけでなく、同じ登記主管部門でも統一された内部規定や業務指針がないため、担当公務員ごとに異なる意見を提示する場合もたまに見受けられます。だからといって、登記主管部門(つまり、政府)を相手に行政訴訟を提起することも中国では簡単な選択ではないでしょうから、実務をする立場としては難しいと言わざるを得ないのです。

ただし、まだ極少数ですが、登記を経て特許実施権出資が完了した事例も一部散見されており、業界でもこれを認めるべきという声が少しずつ高まっているため、より明確な実務指針が設けられれば、今後は普遍的に認められる出資方式の一つになるのではないかと期待もあります。

4.示唆点 

以上のように、中国における特許実施権による出資は、法的に禁止されていないにもかかわらず、実務的に様々な困難があり、地域によっても差が大きいため、まだ広く活用されていないのが現実であるため、やむを得ず特許実施権で出資しなければならない状況に陥る場合は、投資の初期段階から法律専門家の助けを借りて関連イシューについて綿密に検討した後、具体的な事業計画を立てることが、最終的にリスクを減らし、コストも削減できる近道であると考えられます。

 
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