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[Tech Legal Insights] AI、イ・ジェミョン政権の最優先国政課題として注目
2025.06.04.
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2025年の韓国大統領選挙の結果、イ・ジェミョン候補の当選が確定したことにより、韓国の人工知能(AI)政策は新たな展開を迎えることになりました。イ・ジェミョン政府は、AIを世界経済のパラダイムを転換する「ゲームチェンジャー」として明確に規定し、韓国の技術主導成長の核心動力として提示しました。

これに対し、法務法人 麟(LIN)TMT・情報保護専門グループAI産業センターは、イ・ジェミョン政府のAI分野の主要公約を分析し、公共機関、AI関連企業及び産業従事者の人々が直面する新たな機会と、先制的に対応すべき法律及び規制環境の変化に対する見識を提供したいと思います。

[核心公約①]世界最AIインフラ構築

1-1.公約AIデータセンターの建設を通じたAI高速道路を構築し、AIデータセンターを次世代国家社会間接資本(SOC)に指定し、体系的な支援システムを設け、国家人工知能の革新拠点を育成します。

1-2.企業の機本公約の履行は、高性能コンピューティング資源とデータへの接近性を飛躍的に向上させることで、技術開発及びサービスの高度化を促進し、産業別に特化されたAI生態系を円滑に構築することができると思われます。また、インフラ構築に直接的に関わる建設、装備、ソリューション分野の企業はもちろん、革新的なAIサービスと製品を開発する企業及び開発者にも新たな事業機会が拡大されると予想されます。

世界のAIインフラ投資競争が激しくなる一方、本公約は適切かつ戦略的な意味を持ちます。EUは2025年4月に「Continent Action AI」計画を通じて大規模なAIインフラの構築を公表し、米国も2025年1月に「Stargateプロジェクト」を通じて自国のAIデータセンター、半導体生産基盤、クラウドサービスなどの国家の核心インフラ構築計画を発表しました。中国も国家AIファンドを発足させ、1兆4千億ドルに達する大規模な戦略投資計画を推進しています。

このような流れの中、イ・ジェミョン政府が提示したAIインフラ構築公約は、AI主権の確保とともに、インフラ投資を通じた持続可能なAI生態系の造成及び関連産業の育成という明確な目標を提示しています。これは、AIを未来技術主導の成長の核心として設定した公約として、その重要性が大きいと思います。

特にEUの場合、米国のビッグテック企業と旧トランプ政府のAI市場支配力強化の動きに対抗し、先制的かつ大胆な計画の提示と実行を通じて、現在の「デジタル植民地(digital colony)」のような状況を打開しようと積極的な努力をしています。最近発表された「Action AI」計画は、このような努力の具体的な結実です。同計画で新たに提示された「AI Giga factory」の概念は、次世代超巨大AIモデルの開発及び訓練のための大規模施設として、既存のEU AI factoryよりも優れたコンピューティング性能を目指すものです。これは、EUの戦略的自律性の確保とフロンティアAI分野でのリーダーシップの強化を目的とし、各Giga factoryは、約10万個の最先端AI半導体を装備し、膨大なコンピューティングリソースとデータセンターを集約して高度化されたAIモデルを効率的に訓練・開発できるよう設計されています。また、安定した電力供給、高度な供給網管理、高度なネットワーク技術、エネルギー効率の向上、そしてAI基盤の自動化システムの構築も重要な要素として強調されています。

また、米国の「Stargate」構想は、自国のAIデータセンターインフラの建設を超え、UAE、日本などへの拡張を計画しており、このプロジェクトを主導するOpen AIは、世界9カ国を主要協力パートナーとして選定し、Stargateインフラを活用したグローバル協力ネットワークの構築を推進しています。これは、韓国のAI企業にも新たな市場進出のチャンスになる可能性があることを示します。

1-3. LIN's Insight(法律/リスクの観点)国家データクラスターを構築する際、データ接近権、活用範囲、プライバシーの保護、著作権など、複雑な法的問題が発生することが予想されます。AIデータセンターを次世代国家SOC及び「国家戦略技術事業化施設」に指定し、関連規制を緩和するという発表に伴い、今後の運営方式と事業モデル設計に対する綿密な検討が必要です。

特に、現在、運営コンソーシアム事業者の選定を控えている国家AIコンピューティングセンタープロジェクトは、産業界、学界、研究界に安定的なAIコンピューティング資源を大規模で提供する国家核心インフラの構築を目指し、同時にAI半導体の初期市場創出と技術生態系の育成という多角的な産業政策的目標を含んでいます。そのため、国家AIコンピューティングセンター運営のための特別目的法人(SPC)モデルは、産業銀行であるKDBとIBKの持分投資と融資支援、公共部門の戦略的方向設定と資金支援、そして民間部門の運営専門性と投資を結合した金融及びガバナンス構造で設計されています。このモデルの成功の可否は、今後、多様な公共および民間の利害関係者の利害関係を効果的に調整することにかかっていると思われます。[注EUのAIGiga factory構想に必要な財源の確保と運営は、AI開発のための公共・民間パートナーシップ(PPP)の形で行われる予定です]

○エネルギーリスク公約に大規模なAIインフラの運営に不可欠な膨大な電力の確保策が明確に記載されていないことについては注目する必要があります。今後のエネルギー政策の変化は、関連企業の運営コスト及び事業戦略に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

○インフラ活用契約国家予算で確保される最新のGPUなどの先端資源を効率的に活用し、持続的に発展させていく運営課題は重要です。これは、政府、民間企業、運営機関間の契約条件、サービス品質協定(SLA)、責任所在などを明確に規定する法的な検討をしなければなりません。

[核心公約②] AI時代、次世代の先端技術開発と投資を強化

2-1.公約内容AI革命の核心インフラ技術である6Gの商用化を推進し、次世代AI半導体技術及び産業生態系の育成、量子情報通信技術などの開発及び商用化を推進します。

2-2.企業の機会拡大された資金支援と技術開発は新たな市場創出につながります。また、次世代半導体の開発、AI半導体の生態系造成、AIデータセンターの熱管理技術の開発及び育成のための支援と投資を通じて、AI関連産業の技術インフラが強化されます。これにより、多様な融合・複合事業の機会を創出し、産業発展の循環構造を確立することが期待されます。

2-3.LIN's Insight (法律/戦略の観点)
○投資財源を確保するためには、より細密で計画的かつ中長期的な資金計画の確立が必要です。現在、政府の「韓国ベンチャー投資」を通じたマザーファンドの年間投資規模は約1兆ウォンであり、スタンフォード大学の「AI Index」によると、2023年の韓国の民間AI関連投資規模は約2兆ウォンで、世界9位の規模であることを考慮する必要があります。

○特に、米・中のAI覇権競争により、米国から中国に流れていたAI技術関連投資資金がインド、タイ、日本などに移動する機会を韓国が十分に活用できていないこと、そして、公企業の形を通じた国富ファンドの運営が不十分であることなどを考慮すると、韓国独自の主体的かつ戦略的な国富ファンドの投資運営計画を策定し、整備する必要がある時期です。国防、金融、6G通信、医療など分野別に体系的な対応が求められます。具体的には、韓国の代表的な国富ファンド運営主体である韓国投資公社は、約2000億ドルの資産を海外資産に投資しているため、各国が将来の成長動力として競争的に投資しているAIのような大規模な戦略的投資とは違います。そのため、民間の大規模な投資を誘致するための仕掛け役として、国富ファンドの性格の変化を検討する必要があると思われます。

国防、通信、交通、エネルギーインフラなど、AI研究開発(R&D)投資の拡大に伴う企業の参加において、契約条件及び知的財産権(IP)の帰属問題などに対する法的諮問が必須です。

[核心公約③] 人工知能ガバナンス及び法制度の制定

3-1.公約内容大統領直属の国家人工知能委員会の役割を強化し、AI政策首席及び戦略機構を新設し、簡単で安全なデータ活用のための法制度を策定します。

3-2.企業の機会特に、医療、金融などの産業別データの結合及び活用のための規制革新を推進するという公約は注目すべきです。これは、関連産業の開発及び育成のための支援と投資を通じて企業に多様な事業の機会を提供し、産業発展への貢献という循環構造を形成すると予想されます。

3-3.LIN's Insight (法律/規制の観点)AI基本法の総括省庁である科学技術情報通信部と他省庁の協力及び戦略的調整のために新設される戦略機関は、AI政策首席室とともに、強化される国家人工知能委員会を補佐し、事実上、新政府の国家コントロールタワーの役割を果たすと思われます。これにより、グローバルAI競争環境における国内AI生態系の造成と関連産業の競争力強化はもちろん、多角的な協力体制の構築も連携して推進できるものと期待されます。特に、関連法律の制定・改正作業も、このような中長期的な計画と戦略をもとに体系的かつ段階的に、規制革新とともに推進できるものと予想されます。

○AI倫理/安全規制AI技術の潜在的な危険性、安全装置の確保、民主的なガバナンス構築、被害救済手続きなどに対する具体的な政策が不十分であるという指摘が提起されています。また、昨年12月に制定された韓国の人工知能基本法は「基本法」としての限界とともに、事業者の自主規制原則を採択しているため、グローバルな規制動向に合わせ、AIの倫理、安全、責任に対する議論が必然的に深まることが予想されます。しかし、このような努力と同時に、AI基本法の下位法令などの制定過程において、規制革新が必要なAI基盤の新事業分野に過度な規制が課されないよう、汎政府的な調整と戦略的な接近も重要です。また、EUがAI法をはじめ、製造物責任法、製品安全法などを2024年に全面的に制定または改正した事例は特筆すべきです。これは、利用者の保護を強調しつつ、予測可能な技術の活用範囲と限界を法的に明確にし、段階的にAI産業を発展させようとする戦略であり、韓国の法制整備過程でも参考にする必要があります。特に、EUが先導的に制定しているAI関連法規を参考し、韓国の実情に合わせて積極的に受け入れ、補完する作業を継続することは、AIを活用して製品及びサービスの競争力を強化した韓国企業が法的リスクを最小化し、グローバル市場に円滑に進出できるようにするための効果的な方策となるはずです。

[核心公約 ④] 人材育成及び教育
 
4-1.公約内容人が中心となる人工知能の未来教育を強化し、小学校、中学校、高校、大学の教育革新を通じてAI人材育成の強国に跳躍し、海外の優秀な人材を誘致し、国民全員が人工知能を効果的に活用できるよう支援します。

4-2.企業の機会産業現場ですぐに活用可能な人材の能力を強化し、優秀な海外人材の誘致及び関連R&Dの支援を通じ、AI時代の企業の人材需給問題を解消することに貢献すると予想されます。 また、全国民のAI接近権を保障するために国家代表的な大規模言語モデル(LLM)を開発し、これを基盤に民間部門で多様なサービスとカスタマイズされた機器を発売できる新しい市場が形成されると予想されます。

4-3.LIN's Insight (法律/戦略的観点):
○国家の予算で集中的に開発された韓国型LLMをオープンソースとして提供し、各分野別、産業別にカスタマイズされたAIモデルを活用する生態系が造成されるにつれ、AIの誤動作に関する責任配分問題、製造物責任の拡大適用可能性などに対する法的検討が必要です。

○AIインフラを構築し、その接近権を利用者に法的に保障するためには、対象、範囲、方法などを具体的に明示する必要があります。

○R&D支援の拡大及び大学生・研究者のAI基盤の創業支援制度の整備は、ベンチャー投資生態系との体系的な連携が重要です。韓国はR&D投資額に対するGDPの割合が世界的に高いレベルで、関連税制支援も実施されていますが、これが革新的な技術開発、ユニコーン企業の成長、グローバル市場進出に円滑につながらない悪循環を乗り越える必要があります。 特に、過去20年間政府の予算で運営されてきた「韓国ベンチャー投資」のマザーファンドを国家R&D運営成果体系と連携する方策をAI時代のベンチャー創業の支援の観点から検討する必要があります。

○政府主導のプロジェクトなどにより、短期的に人材確保競争が激化する可能性があるため、核心人材の確保及び維持のための競争力のある報酬体系と法的制度の導入が求められます。また、創業企業のためのIP管理及び投資誘致戦略、関連法律諮問などがより重要になってくるはずです。

[核心公約⑤] デジタルヘルスケア革新成長体系の構築、専門人材の育成

5-1.公約内容医療データ及びAIを基盤とするデジタルヘルスケア成長体系を確立し、医学者及び研究専門人材を育成し、医療機器産業を支援します。

5-2.企業の機会現在進行中の「My Healthway」試験事業は、個人医療データ基盤の関連生態系の拡大及び発展を目標とする重要な産業戦略及びビジョンです。これは、デジタル医療機器市場はもちろん、医療データを活用して新商品を開発しようとする医療保険産業界にも重要な事業機会を提供すると思われます。

5-3. LIN's Insight (法律/戦略的観点)
○現在進行中の個人医療情報ポータル事業である「My Healthway」は、健康情報自己決定権を具現化した本人の個人情報転送要求権に応じ、医療機関が保有するビッグデータを共有することで公共医療体系を補完し、コスト削減、個人カスタマイズ型診療サービス提供などの利点を実現しようとしています。しかし、AI基盤の医療が韓国の医療技術と環境を十分に活用するためには、患者データの第三者転送要求権が実質的に行使され、医療機関の協力のもと、製薬、バイオ、保険など関連産業が活性化される生態系の組成が先行されなければならないため、そのための関連法律の補完が必要です。

○AIを活用するデジタル医療機器がグローバル市場に効果的に進出するためには、米国及びEUの規制基準に合致する関連法制度の整備と法律諮問が重要です。特に、EUの製造物責任法、製品安全法などの適用に対応するための事前点検が必要です。

○政府主導のプロジェクトなどにより短期的に人材確保競争が激化する可能性があるため、核心人材の確保及び維持のための競争力のある報酬体系と法的制度の策定が要求され、創業企業のためのIP管理及び投資誘致戦略、関連法律諮問などが重要になると思われます。

[核心公約⑥]SW新強国に跳躍するための基盤の造成

6-1.公約内容SW人材の能力強化のための基盤を造成し、規制革新を通じたSWの成長、IT・SW新技術の融合の加速及び輸出の活性化を推進します。

6-2.企業の機会公共SW発注制度の改善及び合理的な代金算定などの規制改善を通じて、技術力のあるSW企業に事業機会が拡大されます。また、公開SW基盤の融合技術革新の支援及び海外輸出支援を通じて新市場の開発が可能になることが期待されます。

6-3. LIN's Insight (法律/戦略的観点)AI技術の発展に不可欠な公開SW(Open Source Software)基盤のIT融合技術を政府の支援で開発し、これを基に公共調達市場への参加及び新興市場開拓を体系的に推進するためには、IP次元の法律諮問と検討はもちろん、国際取引法上の問題点も綿密に検討する必要があります。

[LINの総合分析] 機会の捕捉とリーガルリスク管理のバランス

イ・ジェミョン政府のAI政策は、大規模な国家主導の投資と法制の策定などを通じて「AI3強」への跳躍を目標とし、AI企業には前例のない成長機会を提供する可能性を持っています。しかし、必要な財源の調達方案、AI高速道路の建設及び運営方式の効率性と透明性の確保、AI主権を考慮した国家代表AI基本モデル(foundation model)の開発及び産業別カスタマイズされたAIモデルの開発・普及に伴う民間部門との合理的な役割分担、安定的なエネルギー確保方案、AI倫理及び安全規制の策定、そして適切かつ体系的な規制革新の推進など、現実的な課題と法的リスクも存在します。

一方、世界のAI政策環境も急速に変化しています。米国下院は、ビッグテックAIに比較的友好的なトランプ政府の立場を反映し、州政府規模のAI規制を今後10年間禁止する法案を可決し、EUもAI時代の個人情報保護規制を合理化するための措置を検討し始めました。また、大規模な国富ファンドを運用するサウジアラビアがAI半導体の製造からデータセンターの構築まで包括する戦略的投資を発表するなど、韓国のAI戦略と法制度もこのようなグローバルトレンドに合わせ、迅速かつ効率的に策定・執行される必要性が高まっています。これは、関連企業にとって国内外市場で新たな機会が開かれる可能性があることを意味します。

また、米国と中国間のAI覇権競争が激化する一方、2023年8月のキャンプデービッド宣言で日・韓・米3国間のIT同盟とAI協力が主要議題として取り上げられ、今後、トランプ政府により対中AI牽制がさらに強化される可能性があることなどを考慮すると、技術主導の成長の新たな核心軸であるAI時代を成功的に切り開くための新政府の努力は、汎政府的なコントロールタワーを中心に、グローバル協力体制に基づき、戦略的かつ多角的に行われる必要性が今まで以上に強調されます。これに伴い、韓国企業の対応と準備もより体系的に行わなければならない時期だと考えています。
 
 
法務法人麟TMT・情報保護専門グループAI産業センターは、急変するグローバル政策環境の中で、 新政府の政策に合わせ、企業が法的リスクを先制的に管理し、事業の機会を最大限に活用し、AI中心の技術主導型成長の主役になれるよう、最適な法律諮問と戦略的ソリューションを提供したいと思います。
 
<上記内容に関してご疑問などございましたら、ク・テオンTMT・情報保護専門グループ長(tekoo@law-lin.com)、 バン・ソクホAI産業センター長(shbang@law-lin.com)までご連絡ください>
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