最近、プラットフォーム及び電子商取引分野において、消費者を保護するための法的規制が強化されています。特に、2024.2.13に国会を通過した改正電子商取引法の2025.2.14の施行に合わせ、同法改正施行令と施行規則が同時に施行され、事業者の運営方式に実質的な変化を要求し、業界の注目を集めています。今回のニュースレターでは、改正された施行令の核心的な内容を説明し、企業が実務的に対応できる方法を紹介します。
1.改正施行令の主要内容
2025.2.14に改正・施行された電子商取引などにおける消費者保護に関する法律施行令は、オンラインで消費者が必要としない決済や加入を誘導する欺瞞的なインターフェースデザインを意味するいわゆる「ダークパターン」の規制を本格化する内容が含まれています。プラットフォームをはじめとする電子商取引事業者の欺瞞的なUI/UX設計行為を具体的に禁止し、定期購読の慣行を透明に改善するための新たな義務条項を導入しました。改正された電子商取引法で規制している6種類のダークパターン及び同法施行令の主要改正事項をまとめると下記の通りです。
ダークパターンの種類 |
規制内容 (法律上の根拠) |
施行令・施行規則の
具体化事項 |
隠されてる更新 |
定期決済代金の引き上げや無料→有料転換する際に消費者の事前同意及び取り消し・解約方法の告知義務(電子商取引法第13条第6項) |
同意および解約方法の告知期限:増額または有料転換30日以内に消費者の明示的な同意の確保及び案内(施行令第20条の2) |
価格の
段階的公開 |
正当な理由なく、財貨などの購入の合計費用ではない一部の金額のみを表示・広告する行為の禁止(電子商取引法第21条の2) |
最初の画面で合計金額を表示することが困難な場合、例外的に最初の画面と連動した画面で除外項目及び理由を明示するよう規定(施行令第11条の4) |
特定オプションの事前選択 |
追加商品などを消費者が選択する前に選択された状態で提示し、購入を誘導する行為の禁止(電子商取引法第21条の2) |
具体的な追加規定なし |
不適切な
階層構造 |
選択項目の大きさ・形・色などに大幅な差を設け、事業者に有利な特定の項目への誘引を禁止(電子商取引法第21条の2) |
具体的な追加規定なし |
取り消し・解約の妨害 |
取り消しや解約の手続きを正当な理由なく複雑に設計する行為の禁止(電子商取引法第21条の2) |
具体的な追加規定なし |
反復的な干渉 |
消費者の決定事項に対して反復的に変更を要求する行為の禁止(電子商取引法第21条の2) |
消費者に同じ変更要求を少なくとも7日間受け付けないよう設定する機能を提供する場合、例外を認める(施行令第27条の2) |
今回の改正の目的は、事業者が提供する明確な情報に基づいて消費者が合理的な選択をすることができる取引環境を造成し、これによりオンライン環境における消費者保護を強化することにあります。法律、施行令、施行規則が改正され、同時に実施されていることは、ダークパターン規制に対する政府の包括的かつ体系的な取組みを示しているものであり、事業者はこれに応じて新しい規制環境に素早く適応する必要があります。
改正施行令は、このような義務違反に対する制裁基準も定め、法律違反の場合、公正取引委員会は当該事業者に対して是正措置を命じたり、違反回数に応じて最大1年以内の営業中断及び最大5百万ウォンの罰金を課すことができます。例えば、営業中断は1回目の違反で最大3ヶ月、2回目6ヶ月、3回目12ヶ月まで命じることができ、罰金は1回目100万ウォン、2回目200万ウォン、3回目以上500万ウォンと定められています。
2.改正施行令の意義:プラットフォーム事業者及び電子商取引企業に与える影響
今回の施行令改正は、プラットフォーム事業者と電子商取引企業全体に重要な法的・実務的含意をもたらします。最も直接的な影響は、オンラインサービスのデザイン及び運営方式全般の再検討を余儀なくされることです。規制対象となった6種類のダークパターン行為は、大部分が企業のウェブ/アプリのインターフェース設計に関するものであるため、プラットフォームを運営し、商品を販売する事業者は、サービスにこのような要素が隠されていないかどうかを綿密に検討しなければなりません。特に、定期決済や購読サービスを提供する企業は、決済金額の引き上げや無料から有料への転換の際、必ず30日以内に利用者に事前同意を得て案内しなければならないため、決済システムと通知の手続きを整備しなければなりません。
また、オープンマーケットや出前アプリなどの仲介プラットフォームの場合も例外ではありません。通信販売仲介業者も自社のウェブ・アプリインターフェースを通じて消費者取引に関与する限り、関連規制を遵守しなければならないため、価格情報を最初の画面に一部だけ表示したり、入店業者の商品オプションがあらかじめ選択されるような設計があった場合は改善が必要です。
3.海外主要国の同種の規制
ダークパターンに対する規制は韓国だけの流れではなく、海外の主要国でも積極的な法的・制度的対応が行われています。主要国の事例と比較してみると、下記のような意義を得ることができます。
EU: EUは、消費者権利指令(Consumer Rights Directive(CRD)を通じて、オンライン取引での追加費用については、消費者の明示的な同意を求めることを義務付けていて、消費者が自分で解除しない限り、同意したものと推定するように基本オプションとして設定している場合、消費者はその金額を払い戻す権利があると定めています(第22条)。同指令が実際に適用される前の2012年にも欧州司法裁判所(CJEU)は、航空会社が航空券販売過程で旅行者保険オプションを自動的に選択させておいた行為がEU航空サービス規則(Regulation (EC) No 1008/2008)第23条第1項 [i]を違反していると判断した事例があり、これは消費者の明示的な同意なしに追加金額を請求することを禁止している原則を確認できる事例です。
また、2022年、EU執行委員会は、Amazonのプライムサービスの解約手続きが過度に複雑であるという苦情が提起されると、当該手続きを簡素化するよう措置し、これにより、AmazonはEU及び欧州経済領域(EEA)で「2回のクリック」だけで解約できるよう、プロセスを改善することに同意しました。これは、消費者の解約を妨害する複雑な手続きが不公正商行為に該当する可能性があることを示す事例であり、EUはこの他にもデジタルサービス法(Digital Services Act(DSA)及び不公正商慣行指令(Unfair Commercial Practices Directive(UCPD))を通じて「ダークパターン」を明示的に述べ、消費者の解約権を保障しています。
米国:連邦政府の包括的なダークパターン禁止法はありませんが、連邦取引委員会(FTC)を中心に積極的な法執行が行われています。2023年6月、FTCはAmazonが意図的にUIを複雑に設計し、消費者が気づかないうちに有料プライムサービスに加入するよう誘引し、解約を難しくしたのは代表的な「ダークパターン」に該当すると主張し、訴訟を提起し、現在、裁判が進行中です。
また、FTCは2022年に「ダークパターン報告書(Bringing Dark Patterns to Light)」を発刊し、ダークパターンの多様なタイプを分析し、企業が注意すべき事項を提しました。特に、自動更新購読サービスに関する欺瞞的な慣行を規制するため、既存のNegative Option Ruleを強化し、解約を簡素化するいわゆる「Click to Cancel」規定を導入しました。 この規定は、事業者に明確な情報提供、明示的な同意獲得、簡単な解約手続きの提供義務などを課しています。
韓国企業がグローバル市場で事業を展開していくためには、このような海外の規制動向も考慮し、グローバルコンプライアンス戦略を確立する必要があります。
4.プラットフォーム事業者が準備しなければならない主なリスクと実務的な対応方案
電子商取引法及び下位法令の改正は、韓国オンラインプラットフォーム事業者に消費者保護のための新たな基準を提示し、企業はこれに対する万全の準備をしなければなりません。企業が考慮すべき実務的な対応方案は以下の通りです。
* 全面的なダークパターン監査の実施: 法律専門家と協力し、自社のオンラインプラットフォーム(ウェブサイト、アプリケーション)、広告・マーケティング資料、会員登録・購入・購読・解約など、ユーザーの全過程を対象に、韓国法で禁止されている6つのダークパターンタイプに該当する要素があるかどうかを綿密に識別し、改善する必要があります。 (不快感を覚える可能性がある場合を含む)
* 定期決済プロセスの改善:購読型商品の場合、価格変更や有料転換にあたって、事前同意の取得及び告知義務を履行できるよう、関連システムを全面的に検討し、必要な機能を開発・適用する必要があります。消費者が簡単に購読を解約できる明確かつ分かりやすい経路を提供することも重要です。
* 明確なUI/UXガイドラインの策定及び適用:韓国法令で禁止されている6つのUIパターンを避けられるよう、具体的な社内ガイドラインを策定し、新規機能の発売やマーケティング活動において一貫して適用する必要があります。
* 社員教育の強化及び法規遵守文化の造成: ダークパターンの規制に関する部署の社員を対象に、韓国改正法令の内容と会社内部の指針に関する教育を実施し、法規遵守に対する全社的な認識を高め、実務におけるエラー発生の可能性を減らす必要があります。
* 専門家と協力した先制的な法律リスク管理: 定期的な法律コンサルティングを通じて内部コンプライアンスシステムを点検し、強化することが重要です。特に、改正法の趣旨と内容を反映し、利用規約、個人情報処理方針、様々な同意案内文、ポップアップウィンドウなどの内容を明確かつ透明に改定する必要があります。
法務法人 麟(LIN)は、韓国のダークパターン規制の変化に対する分析はもちろん、EUのデジタルサービス法(DSA)や米国のFTCダークパターン報告書など、主要な海外市場の規制動向及び消費者保護に関する議論を持続的にモニタリングしています。これを基に、顧客企業が韓国市場における法的リスクに先制的に対応し、さらに、消費者の信頼をより強固に確立することができるよう、国内外の最新情報を基に詳細なコンサルティングを提供しています。
今回の電子商取引法改正は、韓国事業者にとって短期的には適応のための努力が必要かもしれませんが、長期的には、消費者中心の透明なサービス環境を確立し、信頼を確保する重要なきっかけとなると思われます。企業は法規の遵守を超え、消費者に公正かつ明確な情報を提供することで、ブランドの価値を高め、持続可能な成長を実現することができ、先制的かつ積極的な対応は、最終的に企業の競争力を強化し、より大きな成功につながる基盤になるはずです。
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[i] 選択可能な追加料金は、予約過程の開始時点で明確かつ透明で分かりやすく通知する必要があり、消費者が直接選択(opt-in)した場合にのみ請求できるよう定めている